インバウンド特集レポート

歌舞伎町ルネッサンス ホテル開業による外国人の宿泊が街を変えるか?

2015.07.28

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特集レポート

歌舞伎町は今日も多くの外国人ツーリストでにぎわっている。ここ数年、周辺でホテル開業ラッシュも起きている。新宿は都内で最も外国客に人気のホテル地区なのだ。世界的にも知られるこの歓楽街はこれからどう変わっていくのか。周辺のホテルに滞在している外国客にもっと街を楽しんでもらい、お金を落としてもらうには何が必要なのだろうか。考えてみたい。

目次:
ロボットレストランは日々進化する
エクスペディアが指摘する新宿の3つの魅力
外国人ご用達のカプセルホテルの世界
人知れず外客率8割のデザインホテルもある
「歌舞伎町ルネッサンス」の転換点
ホテルの宿泊客が街で消費を始めている
地元の人と一緒に楽しめる体験がほしい

新宿歌舞伎町のネオンの下には、今日も多くの外国人ツーリストでにぎわう光景が見られる。靖国通りで大型バスから降りてきた中国やタイの団体客たちは添乗員に先導され、セントラルロードから裏道まで列をなして散策している。ドンキホーテの前でスーツケースを広げて大量購入した土産の品定めをするグループもいる。キャリーバックを引きずるアジアの若い個人客も次々と横断歩道を渡ってくる。欧米のツーリストたちもそこかしこを頻繁に往来している。

 

今年上半期(1~6月)で914万人とますます増加する訪日外国人旅行者。日本政府観光局によると、年間を通じて1800万人前後の見通しと2020年に2000万人という政府目標も前倒しで実現しそうな勢いだ。

 

彼らの来訪が歌舞伎町の風景を大きく変えようとしている。でも、どうして彼らは歌舞伎町にやって来るのだろうか。

 

世界の観光地と呼ばれる場所には、誰もがそこで記念撮影を始めてしまうポイントがある。富士山の絶景もそうだが、渋谷センター街の交差点もいまや定番。こうした情報はネットにあふれていて、SNSを通じて世界に発信されている。

 

では、いまの歌舞伎町でそれはどこだろうか。

 

今年4月に開業した「ゴジラルーム」が話題のホテルグレイスリー新宿(新東宝ビル)か。あるいは、「歌舞伎町一番街ゲート」の下で自撮りする? いや、むしろ西新宿の高層ビルやヤマダ電機の巨大スクリーンをバックに撮るのがお好みか?

 

これらは確かに歌舞伎町でよく見かける光景である。いまや歌舞伎町は外国人ツーリストのための都内有数の“回遊”ゾーンとなっているのである。

 

では、ここで“回遊”した後、彼らはどこに向かうのだろうか。

 

 

●ロボットレストランは日々進化する

そのひとつが、新宿区役所の裏にあるロボットレストランである。この話はもうよく知られているかもしれない。以前、やまとごころ.jpのインタビューでも紹介した、外国人ツーリストが殺到する都内でも数少ないナイトエンターティンメントスポットである。

 

歌舞伎町の「ロボットレストラン」になぜ外国客があふれているのか?

https://yamatogokoro.jp/inbound-interview/2013/index06.html

 

日本の女子ダンスチーム《女戦》と巨大アンドロイドが共演するダンスショーが楽しめるというふれこみの同レストラン。その開業3周年も近い6月初旬に訪ねたところ、入り口に以前はなかった多言語の歓迎表示が置かれていた。ロシア語やタイ語まであり、客層の多国籍化が進んでいることがうかがわれる。

 


18カ国の多言語が表示されるロボットレストランの看板

 

きらびやかだが、キテレツというほかない待合室の様子は変わらないが、受付は日本語を話す外国人スタッフだった。そこでは東南アジアのリゾートホテルのラウンジでよく聴く洋楽のライブ演奏が行われている。21時50分開演のその日最後のショーで、観客は若い欧米人がほとんど。アメリカのTVコメディショーに出てくるような外国人司会者が「ようこそ、クレージーショーへ」とあいさつすると、照明が落とされ、ショーは始まった。

 


ショーの観客席は外国客だらけ。最近はアジア客も増えてきた

 

実は、半年前にここに来たとき、早めの時間帯だったせいか、欧米の中高年のツーリストの姿が多く、また小さな子連れの母親もいて、客層は明らかに幅広い年齢層に広がっていた。おそらく彼らは滞在先のホテルのロビーに置かれたチラシを手にしてここに来たものと思われた。

 

見るからに善男善女である彼らは、海外旅行先の夜を過ごす常としてカップルで、あるいは親子で食事を含めたナイトライフに繰り出そうとしていたのだ。はたしてショーの中身は、彼らを心底楽しませただろうか? 少し違和感を覚えたものだった。

 

そこに一抹のあやうさを感じながらも、ロボットレストランは外国客の趣向に合わせたナイトライフの受け皿として日々進化しているようだった。もはや開業当初のような欧米メディアや文化人が訪れる特別のスポットではなくなっているかもしれないが、客足は遠のくばかりか増えている。はっきり言って、ショーの中身を除けば、そこはとても日本とは思えない。入場料は1人7000円と以前より値上がりしているが、この1年の円安で外国客にとってはチャラみたいなものかもしれない。

 

このような“クレージー”な外国客向けのナイトスポットは、実のところ、世界のあらゆる観光地で見られる普遍的な光景ともいえる。それが六本木や赤坂、銀座ではなく、歌舞伎町に見られることは、これからの日本のインバウンドの行方を象徴しているように思う。

(Part 2へ続く)

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