インバウンド特集レポート

第11回 2015.03.25

訪日客増加で客室も足りない!? 多様化する宿泊ニーズに対応した新サービスや業態転換はどこまで進むか

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特集レポート

訪日外国人数が1340万人(2014年:1341万人)を突破。東京や大阪など大都市圏のホテルでは客室稼働率の上昇にともない、各国の訪日ツアー客の受入を断念しなければならない事態が起きている。昨年、本レポートにおいてツアーバスの不足問題を指摘したが、今後の訪日旅行市場にとって客室不足も大きな懸念材料となっている。こうしたなか、ホテル業界では新規開業による客室供給とともに、新しい宿泊サービスの創出や業態転換で、この喫緊の課題に対応しようとしている。その取り組みを紹介する。

目次:
ホテルの客室不足は2020年まで続く!?
都内のホテル地区が可視化してきた
気がついたらまわりに外国人が……東新宿は外客FITゾーンに変貌中
サービス付き賃貸など新種の宿泊形態も
京都や大阪でも外資進出が活発化
簡易宿が外客向けホテルに業態転換
ホテル市場を活性化する海外予約サイト
ラブホテルの外客向け活用も

訪日外国人数が1300万人(2014年:1341万人)を突破し、全国の観光地や都市部で外国人旅行者の姿をよく見かけるようになった。

なかでも東京や大阪など大都市圏のホテルは客室稼働率が上昇。外国客の国内手配を担当するインバウンド関係者からは、春と秋の繁忙期には各国の訪日ツアー客の受入を断念しなければならない事態が常態化しているとの声が聞こえてくる。

政府は2020年までに訪日外国人2000万人の目標を掲げるが、都内の旅館やホテルの客室数は現在約14万室。訪日2000万人時代には「1万室が不足する」(JTB総合研究所)といわれる。
早くもこの時点で訪日を希望する外国客の受入をお断りしているようでは、達成は難しい。昨年、本レポートで指摘したツアーバスの不足問題とともに、客室不足も今後の訪日旅行市場の成長にとって大きな懸念材料になっている。

●ホテルの客室不足は2020年まで続く!?

2014年の国内ホテルの客室稼働率は好調だった。だが、都市別にみると地域差がみてとれる。前年比で大きく伸ばしたのは、ともに3.0%増の大阪(88.9 %)や沖縄(77.3%)だが、名古屋のように0.7%減(84.0%)の都市もあるのだ。通年で86.0%と高い稼働率で推移する東京も、8月以降は前年度を下回る月が多かった。

売り手市場となったことからホテルの客室単価が上昇している影響が考えられる。海外の旅行会社からは「都心のホテルは予約がただでさえ入らないうえ、高くなった」という恨み節が聞かれる。客室を押さえられないため、ツアー催行を断念するケースも増えているからだ。低価格で大量送客するビジネスモデルの団体ツアーでは、都内の宿泊施設を避け、近隣県にシフトしているのだ。「東京はホテルが取りにくい」という風評の広がりは気になるところだ。

こんな指摘もある。ある上海の旅行関係者は「20年まで日本のホテル不足は続くだろう」と観念しているという。なぜなら、都内の客室供給は今後それなりに増えるだろうが、五輪後の需要の落ち込みをふまえ、日本の開発業者は慎重だからだ。上海万博(10年)前のホテル開業ラッシュで、中国の高級ホテルは軒並み客室稼働率の低下に悩んでいる。日本側が上海を反面教師にするのは当然だと彼らはみているのである。

もっとも、訪日外国客の宿泊実態はさまざまだ。全体の5人のうち4人を占めるアジア系、すでにFIT化している成熟市場の欧米系、富裕層から訪日客のボリュームゾーンであるミドルクラス層、さらにはお金をなるべくかけずに旅行を楽しむバジェットトラベラー層に至るまで、国籍や階層、年代別に異なるその実態は多様化している。

問題は単に客室不足だけではないのだ。多様化する宿泊ニーズへの適切な対応こそが求められている。

これは新規ビジネス創出のチャンスである。以下、この喫緊の課題に応えるべく、国内で生まれつつある新しい宿泊サービスや業態転換などのユニークな動きをみていきたい。

●都内のホテル地区が可視化してきた

2014年12月、ラグジュアリーリゾートの代名詞であるアマンリゾーツによる「アマン東京」が大手町タワー(千代田区)に一部営業を開始した。国際的に評価の高い同グループが手がける初の都市型ホテルだけに、巨大な和紙で覆われたガーデンレセプションなど、日本の伝統素材が使われた館内の優雅な意匠の数々は、海外からも注目されている。


「隠れ家リゾート」らしく、アマン東京の玄関は見えにくい場所にある
アマン東京 http://luxury-collection.jp/hotel/Amantokyo/

一般に外資系ラグジュアリーホテルは、物件を所有せず、運営に特化する経営スタイルを採用。都心の再開発の目玉である超高層複合ビルの上層階に入居し、客室数を絞り込んでいることが特徴だ。アマン東京は84室。客室数だけみれば一般のビジネスホテル並みで、今日急増する訪日外国客の客室不足の解消には必ずしもつながらない。

富裕層向けの外資系ラグジュアリーホテルの動向は華やかな話題性があるものの、訪日外国客のボリュームゾーンを占めるのは、やはりミドルクラスの旅行者である。こうした我々日本の一般国民の感覚に近い外国客が利用する宿泊施設の集まる地区が近年、都内に現れている。これは欧米やアジアのインバウンド先進都市にはほぼ見られることで、東京でも遅ればせながら可視化してきたといえる。

現在、都内の主なホテル地区は、新宿や銀座、品川、上野、浅草などだろう。これらの地区は、外資系ラグジュアリーホテルが集中する東京駅周辺(八重洲、丸の内、日本橋など)や六本木とは明らかに街の景観が異なっている。エリアによって宿泊施設のタイプや旅行者の層も色合いが違う。同じ地区の中に、欧米やアジアの個人客、ビジネス客が利用するシティホテルと、一般レジャー客のための宿泊特化型ホテルチェーンやビジネスホテルが混在していることも多い。最近では、若いバジェットトラベラー向けのゲストハウスが増えている浅草から隅田川沿いのようなエリアもある。

気がついたらまわりに外国人が……東新宿は外客FITゾーンに変貌中

新宿は1970年代に開発された西新宿のホテル地区が広く知られているが、近年JR山手線をはさんだ内側の東新宿にある手ごろな価格帯のビジネスホテルを利用する外国客が増えている。主に欧米からの個人レジャー客だ。この地区のホテルは以前、地方からの出張客やレジャー客が主に利用していたが、外国客もそれに加わりつつあるのだ。円安の影響で50米ドルを切る価格帯のホテルも多いことから、いまや東新宿は外客FITゾーンになっている。

なかでもこの地区では老舗の「東京ビジネスホテル」は外国客比率の高いことで知られる。関係者によると「うちは昔から欧米客が多い。口コミで訪ねてくる方ばかり。西新宿のホテルに比べると宿泊料金は半分(1泊4100円~)だから、長期滞在される方が多い。うちを拠点に箱根や京都に行ってこられる方もいる」という。シンプルなホテル名が外国客にわかりやすいことも大きいようだ。

フロントサービスもチェックイン・アウトの手続きなど簡略なもので、西新宿のシティホテルのようなコンシェルジェ機能は特にない。施設や客室も決して新しいとは言えない。それでも、コストパフォーマンスを重視する宿泊客には問題ないようだ。彼らは自らネットを活用し、東京滞在を楽しんでいる。


東京ビジネスホテルhttp://tbh.co.jp/

最近、東新宿ではアジアからの個人客も増えている。香港や東南アジアから来た若い旅行者が、新宿3丁目や東新宿の地下鉄駅から重いスーツケースを引きずり、ガラガラ音をたてながらホテルに向かって歩いている。都心に位置しながら閑静な住宅街だった東新宿の住人からすると、気がついたらまわりに外国人がいっぱい、という現象が起きているのだ。

東新宿は、明治通りをはさんで歌舞伎町や伊勢丹があり、東京を代表する繁華街に近いという絶好のロケーションでもある。交通の便もよく、東京滞在をリーズナブルに楽しむには好都合の場所なのだ。
直近の話題としては、歌舞伎町のコマ劇場跡地に15年4月に開業する「ホテルグレイスリー新宿」がある。最上階の30階にゴジラの世界を体感できる客室を設けているという。すでに巨大なゴジラの頭部はお目見えし、「アジア最大の歓楽街」で異彩を放っている。海外で圧倒的な知名度を誇る歌舞伎町に立地していることから、外国客の人気を呼ぶことだろう。


ビルの上からゴジラが顔を出す
ホテルグレイスリー新宿 http://gracery.com/shinjuku/

 

(Part 2へ続く)

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