外国人観光客受け入れノウハウ

団体の外国人観光客の案内や対応方法を学び、効率よい接客を —観光施設・フルーツ狩り編

2020.03.13

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ケース2:高知県南国市でいちご狩りコンテンツを提供する西島園芸団地での外国人対応のポイントをアドバイス

第2回目となる今回は、「団体客も訪れる観光施設(フルーツ狩り)が、効率よく外国人観光客にご案内する方法」をテーマにお届けします。

日本のフルーツは新鮮でおいしいとの口コミから、台湾やタイなどアジアを中心に、訪日した際のアクティビティとして、フルーツ狩りが注目を集めています。

しかしながら、外国人観光客が自分でフルーツ狩りを体験できる施設を探すのは難しく、またそういった施設は公共交通機関でのアクセスが難しいケースも多い。そういった理由から、団体客の利用が多いのが特徴です。

今回は、団体の観光客が多い観光施設で効率よく接客する際の心構えとポイントを、個別研修を実施したフルーツ農園、西島園芸団地での事例を交えながら紹介します。

 


目次
1)団体客受け入れする観光施設が抱える課題
2)団体の外国人観光客対応のコツとポイント
3)研修を終えて今後への意気込み


 

1)団体客受け入れする観光施設が抱える課題

期間限定で行ういちご狩りが外国人観光客にも人気コンテンツに

今回研修の舞台となったのは、高知県中東部の南国市にある西島園芸団地。

園内ではフルーツ栽培をしているほか、園内併設のカフェでは、フルーツをたっぷり使ったメニューを展開し、お土産の販売も行っています。また、観光客向けには1月~6月の間、いちご狩りを提供。高知県内だけでなく、香川県や岡山県、広島県からもお客さんが訪れ、繁忙期は1日1000人が来園することもあるほど。

 

西島園芸団地で外国人のお客様が増え始めたのは、3年ほど前。県や地域DMOの事業を通じ、ファムトリップやブロガーによる取材を受け入れ始めたことで海外メディアへの露出が増え、園の認知度向上につながったとみられます。

訪れる外国人観光客は、団体客は台湾、個人客は香港から多いのが特徴。観光客増加を受けて、いちご狩りにあたってのルールや注意事項を記載したボードを英語に翻訳し、園内に掲出する取り組みも始めています。

 

言葉の壁ゆえに、外国人観光客への細やかな対応が困難に

インバウンドのお客様誘致は、平日の来園も見込めるため閑散期のお客様増という点でもメリットがある一方で、課題も浮き彫りになっています。

例えば、1~6月以外のオフシーズンの時期にいちご狩りができると思って来園するお客様も。またイチゴの生育状況や園の混雑度よっては、閉園時間前に終了することもあります。そういったときにお客様にいちご狩りができない理由までは伝えられておらず、しっかりお伝えしたいと思っています。

また、平日は来園客が少ないため、外国人観光客への丁寧なサポートもできますが、週末は日本人観光客も多く訪れ混雑するため、細やかなサポートが難しい。そこでお客様を効率的にご案内できるようにしたい。

そういった課題を踏まえ、講師がアドバイスを行いました。

 

2)団体の外国人観光客対応のコツとポイント

団体の外国人観光客も多く訪れる観光施設が、効率よく、かつ丁寧にお客様をご案内するための心構えやポイントを紹介します。

不特定多数の人に伝えるには、図や絵を用いて視覚的に

<基本の心構え>

場所案内など、口頭での説明が複雑なケースは、誰でも理解しやすい「図や絵」を用いて視覚的に訴えましょう。「図や絵」は、説明する言語を変えるだけで応用ができ、わかりやすいいピクトグラムや絵を使えば、国籍や地域に関係なく活用できるので、有効です。

西島園芸団地の場合、いちごを栽培しているビニールハウスは全部で5棟あり、日時によってご案内するビニールハウスの場所が変わります。これまでお客様には、行き先を口頭で案内していたのですが、正しく伝わっておらず道を間違えてしまうケースもあるとのこと。さらに、外国人に限らず日本人のお客様も話をちゃんと聞いていない人は道を間違えてしまうそうです。

そこで、簡単な案内マップを作成し、受付に掲出することを提案。地図は、手書きあるいはExcelなどで簡単に作ればOKです。また、ビニールハウスが全部で5棟あるので、それぞれの道順を異なる色を使って線を引いて示すことも、アドバイスしました。

手作りの園内マップ。ビニールハウスへの行き方をわかりやすくするため、順路を色分け

 

地図を使いながら簡単なフレーズを使って説明

<今すぐ使えるフレーズ集>

地図を使って、口頭でご案内するときに使えるフレーズ

1.地図上の現在地(受付)を指さしながら

We are here. 
ウィー・アー・ヒア

今、ここにいます

 

2.10番のビニールハウス(ご案内したい場所)の場所を指さしながら

Your house, No. 10. 
ユア・ハウス・ナンバー・テン

あなたのハウスは10番です
※地図上の10番を指すだけでなく、実際に10番がある方向をジェスチャーで示してあげるとより親切ですね。

 

3.地図上の矢印(→:道順)を指でたどりながら

Go like this. 
ゴー・ライク・ディス

このように行ってください

館内マップは、外国人だけでなく日本人にもわかりやすい説明ができるので、有効です。

 

伝えたいことを簡単なフレーズと翻訳したボード使って伝える

口頭で伝えるのが難しい内容は、伝えたいことをあらかじめ英訳したボードを掲示する、あるいは質問があった時に見せられるよう準備しておきましょう。

ボードに載せる英文を作る際に自動翻訳ツールを使うと、意味が分からず通じない翻訳になる可能性もあります。そのため、ネイティブの方、あるいは英語が堪能な人の確認を経て作成するのが望ましいでしょう。

また、翻訳されたボードを見せる際に、口頭で簡単な単語を使って補足できるようにすればベストです。ただし、口頭で伝える際に大切なのは「伝わること」。ボードに掲載する場合は、間違いのない正しい英語にすることが望ましいですが、人と人とのコミュニケーションの場合は、文法や表現が間違っていても、相手に伝わればそれでOK。恐れることなく、伝えるという気持ちをもって、笑顔で接することが一番です。

 

例1)本日のいちご狩りが終了したことを知らせたいとき

Finished
フィニッシュ

終了しました

 

例2)いちごが残り少なくなり、状況を確認したうえでいちご狩り体験するかどうか判断するよう促したいとき

Now not many strawberries.
ナウ・ナッ・メニ―・スチュロウベリー

今、イチゴがあまり多くないです

Please go and check first.
プリーズ・ゴー・アン・チェック・ファースッ

まずは(農園に)行って確認してください

If OK, please pay there.
イフ・オーケー、プリーズ・ペイ・デア

問題なければ、そこでお金を払ってください

 

知っている単語とボディランゲージでは通じないときに使える便利なアプリ

どうしてもコミュニケーションが取れないときは、翻訳ツールの力を活用しましょう!

現在様々な翻訳ツールが出ていますが、日本語を中心とした多言語音声翻訳アプリで便利なのが、VoiceTra(ボイストラ)です。

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が旅行用会話を中心とした言葉の壁の克服を目指して開発したもので、全部で31言語に対応、音声入力も18言語に対応しています。日本で研究開発が行われているこのアプリは現在無料で提供されており、スマートフォンでアプリをダウンロードすれば、通信料のみで使用できます。

VoiceTraの最大の特徴は、日本語で話した文章が多言語に訳されたとき、その翻訳が正しいか、再度日本語が表示され確認ができることです。

これまでの翻訳ツールの課題は、誤訳されたかどうかを確認する術がないため、意味が通じているかの確認ができないままコミュニケーションをとってしまっていることです。この点、Voicetraは再翻訳機能がついているため、正しく伝わっているかが確認できます。再翻訳の結果が大きくずれている場合は、簡単な表現に変えるなどすることで正しく伝えられます。なお、一文を長くすると誤訳になりやすいため、文章を短く切って簡潔にすることがポイントです。

通常業務の中でよく聞かれることは、翻訳されたボードを用意したり、簡単なフレーズを覚えるなどして対応し、イレギュラーな質問をされたときの対応、片言の英語やボディランゲージで伝えるのが難しいときは、VoiceTraのアプリを活用してコミュニケーションを取るのがおすすめです。

 


3)研修を終えて今後への意気込み

今回の研修を受講していただいた、西島園芸団地観光部の青木さんによると、これまで、園内のルールや注意事項は、Google翻訳で英訳したものを、園内に掲載していたようです。ただ、中にはなじみのない単語が使われていたようで、自然な英語になるような修正や、外国人観光客に必要なサインについてアドアイスと英訳は、とても助かったそうです。

これまでは外国人のお客様とのコミュニケーションにGoogle翻訳を使用していましたが、正しく英訳されていないのか、意味が通じていないと感じることも多かったとのこと。今回の研修で知ったVoiceTraは「英訳されたフレーズを再度日本語に翻訳して表示してくれ、きちんと伝わっているかどうかを確認できるので、Google翻訳よりも活用できそうです」とのコメントも。

また、園で栽培するフルーツを百貨店の催事場に出展し、販売する機会もあります。その際、外国人の方に話しかけられることも稀にあるのですが、そういったシーンでもVoiceTraは活用できそうです。園内で働くスタッフもスマートフォン率が高いので、スタッフにも教えていきたいです。

西島園芸団地では、旅行会社との商談会の機会があれば積極的に参加しています。それは国内の旅行会社向け商談会にとどまらず、海外のバイヤー向け商談会にも当てはまります。時間や予算の観点から、海外現地で開催される商談会への参加は難しいのですが、海外の旅行会社や航空会社を日本(高知)に招いて開催される商談会については、積極的に施設をPRしているとのこと。

今後も外国人のお客様をお迎えしていきます。

 

研修開催場所:
西島園芸団地 (http://www.nishijima.or.jp/)

講師:
株式会社ライフブリッジ堀岡三佐子氏
株式会社JizoHat ポール・ウォルシュ氏

 

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